「自然の中にもともとある循環の中で生きる」長井雅史さんの語る自然と調和した生き方

−今の活動内容を教えてください。

千葉県のいすみ市で「暮らしのプログラム」という活動に参加しています。自然の中にもともとある循環を大切にしながら、自分たちの手で暮らしを作っていく体験を深めていくことを目的としています。去年からやってるのですが、今年は5ヶ月のプログラムでやってます。畑をやったりしながら、自分たちの暮らしに必要なものを自分たちで作って生活しています。流し台を作ったり、水道管の整備をしたりしてる人もいますね。アースオーブンという窯を作ってる人もいれば、モバイルハウスを作っている人もいます。

−もともとは、どのような思いでこのプログラムに参加しようと思ったのでしょうか?

僕はこれまで4、5年くらい主にコーチングを通じて人の人生と向き合ってきました。あとは、自分自身もともと内省気質があるから自分の内側と向き合ってきたりとかして。その中で、自分にもあるし他人にもあると思ったのがお金への怖れです。お金がなきゃ生きていけないという前提が人の自由な創造性を制約することがあるし、その事が根底に大なり小なり怖れとして流れていると感じました。この社会ではあらゆるものに値段がついていて、暮らしを立てるためにはお金が必要になってきて、そのお金を得るためには何かしら働くという行為が大事になってくるのは事実です。

けれど、もう少し深く考えてみると、人間は本来的には地球で生きてるし、別にお金はなくても生きてはいける。土があって、そこに種を植えたら陽の光と水と土の養分によって何かが育ちます。野菜なんかも、意外と人間が手を加えなくても植物だから勝手に育つんですね。そういったことを通じて、別にお金はなくても生きていけるよなぁ、と感じるようになりました。地球と繋がる暮らしをすることは、お金への怖れが解消される生き方であると感じています。

−こういった生活をすることによって自分自身に起きた変化はありますか?

あー、なんだろうね・・・。今1個出てきたのは、生きることへの安心かな。去年の自分と比べるとだいぶ持ってるな、と思って。去年の僕は普通にマンションにいて、土なんかとも触れていなくて、お金による交換の世界で生きていました。その秩序の中にいるのでお金が必要、というよりそれがなきゃ生きていけないルールだから切迫感が強かったり、常に頭のどこかにお金のことがあったり、それによって自分の選択とか思考が影響を受けて制約されているような状態でした。

今は、そこはだいぶ気楽になってきました。「地球にいれば生きていけるよな」みたいな(笑)生きるということに対する絶対的な安心を取り戻せたように思います。

あとは、答えになってるかわかりませんが好奇心として芽生えてきたものがあります。人が作っているリズムとか人が作っているルール・秩序というものがあるのと同時に、自然の中にもともとあるリズムとか、秩序とかルールもあります。それをもっともっと感じたいという好奇心が湧き始めています。今はテントで寝るのがベースで、いすみは都会のように光も多くないので夜になったら暗くなる。8時くらいには眠くなるんですね。で、だいたい4時くらいには鳥が鳴き始めるのでそれと同時に自分も眼が覚める。それって、すごい自然なんだなぁと感じています。動物としては本来このリズムなんだなぁ、と。10時や11時まで電気がついていてミーティングをしてるというのは、自然のリズムではなかったのだなぁ、と思うようになりました。

あとは、自然のリズムと繋がった暮らしをベースに生きていきたいという思いは強くなりました。ちなみに、900坪あれば1家族が自給自足して生きていけるそうです。300坪が田んぼで600坪が畑。そういう何かに依存しないで自律自走している暮らしをベースにしたいです。

あとは、3人のコミュニティで暮らしているのでコミュニティ暮らしの大変さも感じています。コミュニティで生きていることによって生まれる安心もあれば、それによって生まれる大変さもあります。

自分の中の大きな方針として変わらずにあるのは、今の人間が作っている社会、人間によって構成されている社会にどんな特徴があって、どんな弊害があって、その社会はどういう歴史から生まれていて、人間のどんな性質から影響を受けていて、今どこに向かおうとしているのかということについて知りたいです。それと同時に、もともと自然の中にある秩序を体験を通じて深めていく。この2つが自分の中の根底にありますね。

長井雅史
慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)。大学院時代の対話の研究を経て、独立。いのちが大切にされる働き方や暮らし方、社会のあり方を探究し、実践している。いまは地球とのつながりを大切にするために千葉県いすみ市で暮らしつつ、「対話を文化にする」ための活動をしている。共著書に『対話のことば オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』(2018年)